テーマ 110 部下が自分の考え、意見、意志を発言できる
環境づくりを強化する
■「心理的安全性」とは
2015年11月、グーグルは自社の情報サイト
「re:Work」上で、アメリカの大手通信社である
AP通信(Associated Press)との共同研究の成果として、
下記のような「チームを成功へと導く5つの鍵」を発表しました。
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1.心理的安全性(Psychological safety)
不安や恥ずかしさを感じることなく、
リスクある行動を取ることができるか。
2.信頼性(Dependability)
限りある時間を有効に使うため、
互いに信頼して仕事を任せ合うことができるか。
3.構造と明瞭さ(Structure & clarity)
チーム目標や役割分担、実行計画は明瞭であるか。
4.仕事の意味(Meaning of work)
メンバー一人ひとりが、自分に与えられた
役割に対して意味を見いだすことができるか。
5.仕事のインパクト(Impact of work)
自分の仕事が、組織内や社会全体に対して
影響力を持っていると感じられるか。
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グーグルのレポートでは、
心理的安全性はチームを成功に最も重要な要素であり、
その他の4つ
(信頼性、構造と明瞭さ、仕事の意味、仕事のインパクト)
を支える土台であるとされています。
心理的安全性は、1999年にハーバードビジネススクールの
エイミー・C・エドモンドソン教授により提唱された概念のことで、
目的達成のために、チームのなかで
より率直にものがいえる状態をつくるというものです。
職場で誰に何を言っても、どのような指摘をしても、
拒絶されることがなく、罰せられる心配もない状態のことをいいます。
単に皆が仲良く心地良い雰囲気をつくるということとは異なります。
今、心理的安全性が注目される理由には、
「VUCA(ブーカ)」
(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、
Complexity:複雑性Ambiguity:曖昧性)
といわれる時代の中で、
どの企業にもイノベーションが求められているからです。
イノベーションには失敗がつきものです。
人は不安や恐れを感じ、失敗するかもしれないと思えば、
新たな一歩を踏み出しにくくなります。
そこで必要となるのが心理的安全性ということになります。
■管理職者として「謙虚さ、好奇心」はいつの時代も必要
日経出世ナビのインタビュー記事の中で、
エドモンドソン教授は、
組織のリーダーが心理的安全性を創出するには、
「謙虚さ」と「好奇心」を持つことが必要だと書いています。
下記は記事の抜粋です。
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リーダーは「自分の周りの状況はすべて理解できないものだ」
という前提で、柔軟に対応しなくてはならないのです。
そうでなければ、想定外のことが起こるたびに動揺してしまい、
チーム全体がリスクにさらされてしまうでしょう。
つまり、「不確実性に対して謙虚に向き合う」ということは、
「どんな状況にも賢く対応する」ということなのです。
会社の経営者や管理職は
「リーダーたるもの、確固たる答えを部下に示さねば」
と考えがちですが、むしろリーダーの役割は好奇心を持って
部下や周りの人に質問することなのです。
リーダーがどんな状況にも謙虚に、好奇心を持って向き合えば、
メンバーは自然と心理的安全性を感じることができます。
「どんな状況に対しても謙虚さと好奇心を持って向き合う」とは、
すなわち初心を持ち続けることです。
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エドモンドソン教授が言う、謙虚さや好奇心は、
管理職者として、いつの時代にも必要なことであります。
厳しい今の時代は、初心を持ち続けるといった、
あたりまえのことの一層の徹底が必要な時代ともいえます。
■組織の知識創造のためには議論が必要
一橋大学名誉教授、野中郁次郎氏が1994年に論文発表した
「組織の知識創造理論(SECIモデル)」の中では、
話し合う、議論し合う、切磋琢磨し合うことが
新たな知を生み出すためには絶対必要なことと言っています。
心理的安全性が注目されている時代的背景を踏まえ、
仕事を創造し、新しい現実をつくっていくためには、
部下の方が自分の考え、意見、意志をきちんと発言できる場、
環境の整備に一層意識して取り組むことが重要といえます。
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